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5軸加工とは
5軸加工機の特長
加工機には2軸加工、3軸加工、5軸加工があります。
2軸加工はX・Y軸での2方向から加工を行い、3軸加工はX・Y・Zの3方向から加工を行います。
5軸加工とは、3軸加工のX・Y・Zに「傾斜」と「回転」の2軸を追加したものです。
この傾斜と回転の2軸の使い方は、大きく分けて2パターンがあります。
割り出し5軸加工
傾斜と回転の2軸を固定した状態で加工を行います。
3軸の延長のように使えるため、5軸に不慣れな技術者も設定が容易です。
同時5軸加工
3軸と傾斜・回転の5つの軸を同期させて動かします。
滑らかな3次元曲線を段取りがえなしで加工することが可能です。
5軸加工のメリット
5軸加工は特殊形状の加工を行うのに使われると思われがちですが、汎用性のある形状の加工ででも、3軸に比べメリットがあります。
1、加工時間の短縮
3軸での傾斜加工は、治具や特殊工具への段取り替えが必要ですが、5軸加工であれば初めの段取りで完結することが可能です。
また「同時5軸加工」による3次元の曲面加工も行えたり多くの加工を実現することができます。
2、周速ゼロ点の回避
工具が回転する際、工具の外側と先端の中心部では、1回の回転での移動量が異なります。
先端での加工になるほど効率は下がります。
一番の先端部分は回転していない状態とほぼ同じとなりこれを「周速ゼロ点」と言います。
「ボールエンドミル」などを3軸加工で使用するとどうしても周速ゼロ点での加工が避けられません。
しかし、5軸加工であれば傾斜を容易につけることができるため、周速ゼロ点での加工を回避することができ、効率の良い外側を使用することが可能です。
3、コストの削減
例えば、3軸加工で高さのある加工を行う際、工具の一部が金属に干渉してしまう場合があります。
この場合は、工具を長さのあるものに取り付け直さなければいけません。
しかし5軸加工であれば、工具に傾斜をつけることで短い工具のままでも、高さのある加工を行うことが可能です。
さらに3軸加工で傾斜部分の加工するためには、希望の傾斜をつけるために使う、専用の治具を用意する必要があります。
複数の工具や専用の治具を用意しなければいけない3軸加工に対して、5軸加工は少ない工具で幅広い加工が実現できます。
4、精度の向上
加工面に合わせて段取り替えが必要な3軸加工は、必然的に安定した品質を保つには人的な技術が多く求められ、技術者によってその仕上がりが変わる可能性も高いです。
しかし、5軸加工は1回の段取りで多くの加工ができるため、より滑らかで精度の高い加工が、安定して再現することができます。
5軸加工機の種類
5軸加工はXYZの3軸に、傾斜・回転の2軸を加えた加工機です。
この傾斜・回転の2軸を「工具(ドリル)側」に加えるのか、「加工対象(金属や木材)側」に加えるのか、軸の動かし方は大きく3つに分類されます。
1、回転傾斜テーブル型
加工対象側をセットしているテーブルに、傾斜・回転の2軸を追加した5軸加工機です。
2、傾斜ヘッド回転テーブル型
傾斜は工具側で行い、回転は加工対象側に追加しています。
3、回転傾斜ヘッド型
傾斜・回転の2軸とも工具側に追加しています。
5軸加工機は難しい?サポートが必要な理由
様々な機器がハイテク化される現代では、5軸加工機の幅広い加工力は導入企業の技術力を底上げし、社業を大きく伸ばすことができるはずです。
しかし5軸加工機にもデメリットはあります。
初期導入費が高いこともありますが、一番は「加工機の運用が難しいこと」です。
傾斜と回転を最初に固定し、加工時はXYZの3軸のみを動かす【割り出し5軸加工】であればNCプログラムもそこまで複雑化せずにすみますが、5軸加工機特有の3次元曲面の加工を行う【同時5軸加工】では、NCプログラムが複雑になり作業者のスキルも必要となってきます。
一般的なNCプログラムであればポストプロセッサを使い作成も可能ですが、機械性能を最大限に活用しようと思うとポストプロセッサのカスタマイズを行う必要があります。
ですので、5軸加工を新規導入される際は、機械の性能や高剛性を単に気にするのではなく
- 運用をきちんとサポートしてもれるサポート力
- 機械をスムーズに動かすCAD/CAMの選定
この2つに注目して検討すると、導入後も安心して運用していくことができるでしょう。